サマリー: 「解放の日」関税がついに発動した歴史的な一週間。S&P 500は+3.4%と6週ぶりに反発し、VIXは31→24へ急低下した。一方、日経平均は週間レンジ3,700円の乱高下を演じながら終わってみれば-0.5%。原油は111ドルに急騰し、金は4,651ドルと高水準を維持──市場はリスクオンとリスクオフが同居する「分裂状態」に入った。
今週のハイライト
1. 「解放の日」関税、ついに発動──4月2日(木)、トランプ政権が予告してきた相互関税がいよいよ発動された。対中追加関税、対日・対EUの品目別上乗せなど、広範な関税パッケージが実施に移された。事前に「最悪シナリオ」として警戒されていた一律50%は回避されたものの、自動車25%に加え10〜20%台の関税が各国に課された。市場は「織り込み済み」として消化し、発動日当日のS&P 500は+0.11%と小幅高で着地した。
2. S&P 500、6週ぶり反発──VIX 31→24──先週まで5週連続安だったS&P 500がようやく反転。週間+3.4%と力強いリバウンドを見せた。VIXは先週末の31.05から23.87へ-23%の急低下。四半期末リバランスとショートカバーが重なり、売り疲れの市場にテクニカルな買いが集中した。
3. 日経平均、1日で+5.24%の爆発反発──4月1日(火)、日経平均は+2,675円(+5.24%)と今年最大の上げ幅を記録。前日の米国株急反発と新年度入りの新規資金流入が重なった。ただし翌2日には-2.37%と反落し、「行って来い」の展開に。
米国市場の1週間
S&P 500は6,582で週を終え、前週比+3.36%。5週連続安に歯止めがかかった。NASDAQ(21,879、週間+4.44%)の反発がダウ(46,504、同+2.96%)を上回り、先週までの「テック売り」が逆回転した形だ。
| 曜日 | S&P 500 | 前日比 | 主な材料 |
|---|---|---|---|
| 月 3/30 | 6,344 | -0.39% | 原油高・関税不安で続落、週安値をつける |
| 火 3/31 | 6,529 | +2.91% | Q1末リバランス+ショートカバーで急反発 |
| 水 4/1 | 6,575 | +0.72% | 半導体主導で続伸、LLY FDA承認で急伸 |
| 木 4/2 | 6,583 | +0.11% | 「解放の日」発動もほぼ織り込み済み |
| 金 4/3 | — | — | グッドフライデーで休場 |
火曜のS&P +2.91%が今週のターニングポイントだった。四半期末のリバランス(年金基金が3月の急落で低下した株式ウェイトを埋める買い)に加え、VIXが31→25へ急落するなかでショートカバーが加速。出来高も64億株と今週最大を記録し、売り方の降伏が鮮明になった。
米10年債利回りは4.44%→4.31%と13bp低下。FF金利は3.64%で据え置きのまま。債券市場では関税によるインフレ圧力よりも景気減速リスクを重くみる動きが出始めている。
日本市場の1週間
日経平均は53,123で週を終え、前週比-0.47%(-249円)。数字だけ見れば小動きだが、中身は嵐だった。週間レンジは50,558〜54,258円と3,700円幅に及び、1日あたりの値幅が1,000円を超える日が4日連続という異常なボラティリティだった。
| 曜日 | 日経平均 | 前日比 | 主な材料 |
|---|---|---|---|
| 月 3/30 | 51,886 | -2.79% | 原油急騰+関税不安で急落、配当落ち |
| 火 3/31 | 51,064 | -1.58% | 円高進行(158円台)で輸出株売り |
| 水 4/1 | 53,740 | +5.24% | 米株反発+新年度資金で今年最大の上げ |
| 木 4/2 | 52,463 | -2.37% | 関税発動前の利益確定売り |
| 金 4/3 | 53,123 | +1.26% | 米株続伸を好感、半導体が牽引 |
特筆すべきは水曜の+5.24%。東証プライム市場の9割超が上昇する全面高となり、1日で前週の下落をほぼ帳消しにした。しかし翌木曜には利益確定と関税発動前の警戒感で-2.37%と反落。「5%上がって2%下がる」というジェットコースター相場が今週の日本市場を象徴している。
ドル円は週を通じて160.23→159.63円と小幅な円高。3月末のレパトリ(本国送金)に加え、関税によるリスクオフの円買いが入ったが、日米金利差の大きさが円高の進行を抑制した。
セクター動向
テクノロジー・半導体が今週の主役。先週まで5週間売り込まれていた反動で、NASDAQは週間+4.44%と全主要指数中トップの上昇率。イラン情勢の緩和で地政学リスクが後退し、半導体サプライチェーンへの懸念が和らいだ。東京市場でも東京エレクトロンやアドバンテストが大幅高を演じた。
エネルギーは引き続き堅調。WTI原油は週末に111.54ドルと前週の100ドル近辺から大幅上昇。イラン情勢の不透明感に加え、関税による供給コスト増の思惑が原油を押し上げた。エネルギーセクターETF(XLE)は今週も上昇し、年初来の最好調セクターの座を維持している。
消費・リテールは明暗が分かれた。ナイキ(NKE)が先週の決算で今後9ヶ月の売上3%減見通しを示し-15.3%と暴落した余波が続く。一方、ウォルマートやコストコなど「必需品リテール」は関税下でも価格転嫁力があるとして底堅く推移。セクター内での二極化が鮮明になりつつある。
金融・銀行は底堅い。米10年債利回りの低下(4.44→4.31%)にもかかわらず、先週までの売られすぎの反動で銀行株は小幅高。日本の銀行セクターも、日銀の利上げ継続期待を支えに堅調さを保った。
来週の展望
「解放の日」関税は発動されたが、不確実性は消えていない。相手国の報復措置の有無と規模、そしてFRBの反応が来週の焦点となる。
- 関税の「第2波」リスク: 中国・EUの報復関税が発動されるかどうか。報復の規模次第で市場のムードは一変する
- 雇用統計(4/3発表予定→Good Fridayのため前倒しの可能性): 3月の非農業部門雇用者数。関税の影響が雇用に表れ始めているかが焦点
- ISM非製造業景気指数(4/3発表予定): サービス業の景況感。製造業に続きサービス業にも減速の兆しが出るか
- FOMC議事要旨(3月会合分)の消化: 関税インフレと利下げの両立可能性をめぐる議論の温度感
- 新規失業保険申請件数: 直近は20.2万件と低水準だが、関税の雇用への影響が出始めるタイミングに注意
- 原油価格の行方: WTI 111ドルの水準が持続すれば、スタグフレーション懸念が再燃するリスク
VIXは24まで低下したが、関税発動前の「嵐の前の静けさ」だった可能性もある。来週以降、関税の実体経済への影響が数字として表れ始める局面に入る。「発動で悪材料出尽くし」か「ここからが本番」か──市場の真の答えはまだ出ていない。
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
