サマリー: イラン軍事攻撃とホルムズ海峡封鎖で原油が週間+36%の急騰、日経平均は-5.5%と年初来最大の週間下落を記録した。追い打ちをかけるように対カナダ関税25%が発効し、ダウは-3.0%。日米株の「大分岐」が鮮明になった激動の1週間だった。
今週のハイライト
1. ホルムズ海峡封鎖——原油91ドル突破
週末(2/28〜3/1)に米国・イスラエルがイランの核関連施設を攻撃し、最高指導者ハメネイ師の死亡が報じられた。イラン革命防衛隊(IRGC)は報復としてホルムズ海峡の封鎖を宣言。WTI原油は前週終値の67ドル台から金曜に91.27ドルまで急騰し、週間上昇率は+36%に達した。世界の石油輸送の約20%が通過するこの海峡の封鎖は、エネルギー市場のみならず株式・債券・為替のすべてを揺さぶった。
2. 日経平均、3日で4,600円消失
月曜の利確売り(-793円)に続き、火曜にはホルムズ海峡封鎖を受けて-1,778円(-3.06%)、水曜にはさらに-2,033円(-3.61%)と年初来最大の下落を記録。わずか3営業日で4,600円超を失い、前週つけた史上最高値59,332円からの下落幅は5,000円超に達した。木・金は自律反発したものの、週間では-5.49%と2025年4月の相互関税ショック以来の大幅安となった。
3. 関税ショック第2波——ダウとNASDAQの「6倍格差」
3月4日に対カナダ関税(25%)と対中追加関税(10%上乗せ)が発効。5日にはダウが-785ドル(-1.61%)と急落する一方、NASDAQは-0.26%にとどまり、下落率に6倍の格差が生まれた。製造業・素材セクターが関税コストを直撃され、テック株は相対的に影響が軽微——関税がオールドエコノミーとニューエコノミーを分断する構図が鮮明になった。
日本市場の1週間
日経平均は前週終値58,850円から55,621円へ、-3,229円(-5.49%)の大幅下落となった。TOPIXも連動して急落し、前週の史上最高値更新の熱狂は完全に冷めた。
| 日付 | 終値 | 前日比 | 主な材料 |
|---|---|---|---|
| 3/2(月) | 58,057 | -1.35% | イラン攻撃報道で利確売り先行 |
| 3/3(火) | 56,279 | -3.06% | ホルムズ海峡封鎖宣言、年初来最大の下落 |
| 3/4(水) | 54,245 | -3.61% | 原油続伸で3日続落、5万4千円台に沈む |
| 3/5(木) | 55,278 | +1.90% | 米リリーフラリーを受けて4日ぶり反発 |
| 3/6(金) | 55,621 | +0.62% | 米ダウ急落にもかかわらず小幅続伸 |
下落の主因はエネルギー輸入コスト増への懸念だ。日本のエネルギー自給率は約13%にすぎず、原油高は貿易赤字の拡大と企業収益の圧迫に直結する。加えて、ヘッジファンドが先物市場で日本株を「グローバルリスクヘッジの売り先」として使った可能性が指摘されており、流動性の高い日本市場が海外発のショックを増幅する構造的な脆弱性が浮き彫りになった。
USD/JPYは155.86円→157.53円と約1.7円の円安方向に推移。通常のリスクオフ局面では円が買われるが、今回は原油高→貿易赤字拡大を意識した円売りが上回る異例の展開だった。
米国市場の1週間
S&P 500は前週終値6,879から6,740へ、-2.02%の下落。NASDAQは22,668→22,388で-1.24%、ダウは48,978→47,502で-3.01%と、指数間で下落率に差が出た。
| 日付 | S&P 500 | 前日比 | ダウ | 前日比 | 主な材料 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3/2(月) | 6,882 | +0.04% | 48,905 | -0.15% | イラン攻撃後も底堅い |
| 3/3(火) | 6,817 | -0.94% | 48,501 | -0.83% | ホルムズ封鎖→ダウ一時1,200ドル安→トランプ発言で戻す |
| 3/4(水) | 6,870 | +0.78% | 48,739 | +0.49% | リリーフラリー、VIX低下 |
| 3/5(木) | 6,831 | -0.56% | 47,955 | -1.61% | 関税発効でダウ-785ドル |
| 3/6(金) | 6,740 | -1.33% | 47,502 | -0.95% | 原油91ドル突破、雇用統計前の手控え |
注目すべきは火曜日の値動きだ。ダウは一時1,200ドル超の急落を見せたが、トランプ大統領が「米海軍がホルムズ海峡でタンカーを護衛する」と宣言したことで急速に下げ幅を縮小した。大統領のSNS投稿1つで相場が1,000ドル動く——市場のボラティリティが極端に高まっていることの証左だ。
米10年債利回りは前週末の3.97%から4.13%へ+16bp上昇。原油高→インフレ長期化の連想が債券売り圧力を強めている。FF金利は3.64%で据え置きだが、市場は利下げペースの鈍化を織り込みつつある。
セクター動向
今週は「有事の勝者と敗者」が極めて鮮明に分かれた。
エネルギー: 原油急騰の恩恵を直接受け、週間で最も好調なセクター。Exxon Mobil、Chevronが約+4%、ConocoPhillipsは+5%超と大幅高。ホルムズ海峡リスクが市場テーマとして定着した。
防衛: 中東の軍事衝突を背景に買いが集中。Northrop Grumman +6%、RTX +4.7%、Lockheed Martin +3.4%と軒並み上昇した。
金(ゴールド): 週初に安全資産として買われ一時5,405ドルまで急騰したが、その後は利益確定売りに押され5,181ドルで越週。週間では乱高下したものの、方向感は定まらなかった。
製造業・素材: 関税ショックの直撃を受けたセクター。キャタピラーは3週間で約9%下落、工業セクターETF(XLI)は週間-3.4%。ただし、米国内生産比率の高いニューコア(NUE)やイートン(ETN)は相対的に底堅く、「リショアリングの勝者と敗者」の選別が始まっている。
航空: 原油高が燃料コストを直撃。American Airlines -4.2%、Delta -2.2%、United -2.9%と軒並み下落した。
テック: 週前半はNVIDIA +2.87%、Amazon +3.9%と底堅さを示したが、金曜に原油91ドル突破とVIX急上昇を受けてNASDAQ全体が-1.6%と崩れた。週間では-1.24%と主要指数の中では最も軽傷だったが、金曜の動きはテック株も無傷ではいられないことを示唆している。
来週の展望
今週は「地政学リスク」と「関税リスク」という二つの大波が同時に押し寄せた。来週はこれらの帰趨を見極める重要な週となる。
- 米2月雇用統計の消化 ── 本日発表の雇用統計の結果を、週明けの市場がどう消化するかが最初の焦点。労働市場の強さが確認されれば利下げ期待が後退し、弱ければ景気後退懸念が台頭する
- 米2月CPI(3/11発表予定) ── 原油高のインフレへの波及を測る最重要指標。予想を上回れば債券売り・株安の連鎖が加速しうる
- ホルムズ海峡情勢 ── 米海軍の護衛活動の進展とイランの出方が焦点。原油が100ドルを試す展開になれば、株式市場への下押し圧力はさらに強まる
- 4月2日の自動車関税免除期限 ── まだ1カ月先だが、市場は早くも織り込みに動いている。フォード、GM、トヨタなど自動車セクターの値動きに注目
- VIX 29.49での越週 ── 30超えの「危機モード」入りが目前。週明けの値動き次第では、機械的な売りプログラムが発動する水準に近い
週間マーケットデータ
| 指標 | 今週終値 | 前週終値 | 週間変動 |
|---|---|---|---|
| 日経平均 | 55,621 | 58,850 | -5.49% |
| S&P 500 | 6,740 | 6,879 | -2.02% |
| NASDAQ | 22,388 | 22,668 | -1.24% |
| ダウ平均 | 47,502 | 48,978 | -3.01% |
| USD/JPY | 157.53 | 155.86 | +1.67 |
| WTI原油 | $91.27 | $67.02 | +36.2% |
| 金先物 | $5,181 | $5,237 | -1.1% |
| 米10年債利回り | 4.13% | 3.97% | +16bp |
| VIX | 29.49 | 19.86 | +48.5% |
| FF金利 | 3.64% | 3.64% | — |
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
